合気道では相手と争わない心を大切にする。稽古では自制の心と敵味方にかかわらず相手を敬う心を醸成する。技術や力とは違って、心はそれが受け継がれる限り生き続ける。世界の平和を実現するためには、少数の武道の達人よりも、人々の融和を理念とする武道の心を広める方がずっと効果的である。我(自分の主義主張)のみを生かすのではなく、広く他(の主義主張)をも受け入れる心、我が滅びても他を生かそうとする心、現在の我が滅びた後も将来の他(子供たち)を生かそうとする心、平和の確立にはそのような心の醸成が必要である。
日本の武士道精神と同じく、西洋にも騎士道精神がある。J.F.ケネディがすばらしい言葉を残している。核戦争一歩手前まで進んだキューバ危機の直後、ソビエト連邦指導者に向けた言葉である。
「我々はお互いに考え方に相違があることは認めよう。しかし、同時にお互いに共通点があることも理解しよう。我々の最も基本的な共通点は、皆この小さな惑星の上に住み、皆同じ空気を吸い、皆が子供たちの未来を大切に思っていることである。そして、いずれは皆死んでいく身であるのだから。」
我々は、先人が拓いた、相手と武力で争わない合気道の和の心を人々に広めて行く必要がある。合気道という武道を修行している者が持っている大切な基本理念である。
他を愛する心が人々の心に宿ったとき、人間が存在する限り続くであろう争い事を、武力ではなく宥和で解決しようという試みが成されて行くことであろう。敵を武力で鎮圧するよりもはるかに難しいことではあるが、確かな平和をもたらす抜本的な解決策に他ならない。
和するとは外に心を開くことであり、相手を受け入れて同化する心をもつことである。“和”をいつも心の片隅に置きながら、どうすればそれを具現化できるかを考えながら稽古すべきもである。
合気道横浜代表 木原 泰彦
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